小娘の覚え書き

プレイ日記やお気に入りmod紹介

序章:はじまりの物語

第二話:弓の訓練

 

父さんが言う弓のスペシャリスト…

それは、ヘルゲンに住む古い友人の娘さん「アンジー」の事だった。

今は、ご両親は亡くなられて一人で山奥に住んでいるらしい。

お母様が弓に秀でており、アンジー…さんもそれを受け継いでいると。

 

私は、あれよあれよと父に背中を押されて家を出ることになった。

母が別れ際に、美しい鳥の装飾をしたブレスレットをくれた。

「くれぐれも身体には気をつけてね…キナレスが祝福してくださいますように」

母はそう言いながら少し泣いていた。

そんな母をなだめながら、父はむしろ早くいけ、とニコニコしていた。

たぶん、私を心配させないためだと思う。

そんな二人に見送られ、私は朝早く荷物を持って出立した。

 

アンジーの家は雪深い山道の途中を少し下った場所にあると聞いた。

かじかむ指を擦り合わせながら、こんな寒い場所に一人きりで住むなんて信じられないと思った。

一時間と少しほど歩き、時々地図を見つつ目的地を目指す。

ふと、道を逸れた場所に罠が2つ仕掛けられているのに気づいた。

アンジーはとても用心深いのか、人が嫌いなのか。

あまり気乗りしないままその脇道を降りていき、木で出来た階段を上がると目的地を発見した。

大きめの小屋が一つ。皮なめしなどの道具もあった。

そこで後ろを向いて、アンジーと思わしき女性が皮をなめしていた。

「あの…すみません!」

緊張しつつ声をかける。

すると

「誰?なぜここが分かったの?あなたは何者なの?答えなさい!!」

と彼女が叫ぶように言い、

「何か馬鹿なことをしたら遠慮なくその頭に矢をぶちこむわよ」

と物騒な言葉を付け加えた。

慌てて、「て、敵じゃないです!!!」

と後ずさった。もしかしてすごく怖い人…?!

アンジーは怯えた私の顔を見て、数秒後ハッとした顔をして、

「もしかして、あなたがケルドヴァーグの娘さん…?…ごめんなさい、ここじゃ女は用心しすぎるくらいじゃないといけないの…私はアンジー、よく来たわね。あなたのお父さんから手紙が来てたのをすっかり忘れていたわ」

私の正体がわかった途端、アンジーはホッとしたように緊張を解いた。

あれ、思っていたよりもいい人…?

よくわからない。

促されるまま、小屋にお邪魔し、椅子に腰掛けた。暖炉の炎が暖かくて助かった。

アンジーはというと、いそいそとお茶を入れている。

かけっぱなしのお湯の入ったポットに粉々になった何かを入れて小さなタンカードに注いて渡してくれた。

一口飲むと、身体がポカポカしてきた。

「さて、と。本当によく来たわね。あなた歳は?」

「じゅ、14歳…です。アンジーさん」

「まあ…!なんて若いんでしょう!まあ、私もそれよりも幼い時から母に弓を教わってたから、人のことは言えないんだけれど…」

私は遠慮がちに笑った。

「お名前を聞いてなかったわね」

「カリンです」

「素敵な名前ね」

少しの気まずい沈黙があり、アンジーが軽く微笑んだ。

「まあ、とにかくよろしくね!カリン。私のことはうーん、そうね先生とでも呼んで頂戴!弓をみっちり仕込んであげる!立派な狩人になりたいんでしょう?私にお任せあれ!よ。」

明るく言うと、アンジーは早速弓と矢を私に手渡す。

「まだ日も高いし、早速練習しましょうか!」

「あ…はいっ」

何もかもが目まぐるしく唐突にはじまる。

緊張が解れないまま、その日は初歩的な練習をし、食事をして、薪割りを手伝い、夕食を軽く済ませ、用意してもらった小さな寝床に見を横たえ眠りについた。

 

(ここから…私の道がはじまるんだ…)

 

そう思いながらいつかしか私は眠っていた…。

 

続く